昨日、阿倍野区障がい児サービス事業所情報交換会に行ってきました。そこで、事例検討のこと、計画相談のことが話題となりました。少し関係あるかと思い、先月投稿した小論を載せます。
相談支援専門員の結びつけ機能について考える―ホームヘルプサービスとの連携から
要旨
本稿は、相談支援専門員として従事する筆者が、利用者との出会いの中から、学んだ点および課題について、述べたものである。障害福祉の中にケアマネジメントの手法が取り入れられ、相談支援専門員が、サービス等利用計画の作成を実施することになった。そこでは、利用者の意思および自己決定が尊重され、ケアマネジメント過程を通して利用者の参画が重要視されている。
本稿では、少しの事例から、制度周知の問題と、実際に支援に入ったことによる効果について紹介している。そこで、障害福祉サービスの利用に関しての情報周知がまだ充分でない実態が明らかとなった。また、一方で相談支援専門員とホームヘルパーが連携することによって、支援の方向性を一つにして援助を展開した結果、利用者のQOLがあがったということも述べている。これらから、障害福祉サービスの周知徹底に関して、今後はその手法等、検討が必要という考えに至った。また、相談支援専門員とホームヘルパーとの支援方向の統一によって、利用者の生活の質があがり、利用者の生活に対する意欲が増進する結果につながったことも明らかとなった。
最後に、相談支援に関する課題として、①周知徹底、②相談支援専門員の質について述べている。前者に関しては、事例でも明らかになったことであり、地域間格差も生じている。後者については、相談従事者初任者研修(以下、初任者研修という。)についてと、社会的承認についてである。これらの課題について、実践している者だから気付くことも多いという事実に着目して、声をあげていかなければならないと考えている。
キーワード:計画相談 相談支援専門員 ホームヘルプサービス 障害者ケアマネジメント
1.はじめに
社会福祉基礎構造改革などを受け、社会福祉制度はこれまでの措置制度という時代から、契約制度という時代へと転換した。この契約制度は、障害福祉の分野でも、2003年の支援費制度導入によって、始まることになる。しかし、支援費制度では、障害福祉サービスの質および量に地域間格差が生じたこと、精神障害者を対象としていなかったことから、2006年に、障害者自立支援法が施行された。障害者自立支援法では、ノーマライゼーションの理念に基づき、障害をもつ人が普通に暮らせる地域社会の実現を目的として、相談支援事業を市町村および都道府県の責務として位置付け、サービス利用計画作成を個別給付化した。つまり、障害をもつ人が地域(施設や病院でない場所)で暮らすために、ケアマネジメントの手法を使って地域に点在している福祉サービスが利用できるよう支援する、サービス利用計画を作成することになったのである(とはいえ、サービス計画作成費の利用者件数は伸びず、2010年で3500人に届かない状況であった1))。
本稿では、相談支援専門員として従事する筆者が、日々利用者と出会い、サービス等利用計画作成の過程の中で痛感した現況について、少しの事例を引きながら提起する。とくに、本稿では、地域での安定した暮らしを支援するという目的で、ホームヘルプサービス2) との連携に着目し、支援目標を共有したことから、利用者のQOLがあがった事例等を紹介する。また、本稿の目的は、前述の過程から「社会的場において何が問題であるかの判断を的確に行いうるのはそこにいる人たち」(木下康仁 1997:64)であるとする木下の考えをもとに、筆者の経験を経た相談支援に関する課題について考察することである。
2.相談支援専門員の役割
(1)障害者総合支援法の中での相談支援専門員の役割
民主党連立政権下の2009年に、障害者自立支援法の廃止が明言され、翌年、「障害者制度改革推進本部等における検討を踏まえて障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律」(以下、「改正法」という。)が成立した。改正法では、①地域における相談支援体制の強化、②ケアマネジメントの充実、③自立支援協議会の充実、という社会保障審議会障害者部会の提言を受け、相談支援の体系が整備された。改正法において、「相談支援」とは、①特定相談支援、②一般相談支援であり、①特定相談支援とは、計画相談支援(サービス利用支援、継続サービス利用支援)、基本相談支援と位置付けられた。また、②一般相談支援とは、地域相談支援(地域移行支援、地域定着支援)、基本相談支援である。(相談支援専門員協会 2012:2)
さらに、2012年に障害者自立支援法を障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(以下:障害者総合支援法という。)に改称することを盛り込んだ法律(地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律)が成立し、2013年より、施行されることとなった。
筆者は、一般相談支援と特定相談支援双方の事業者であるが、本稿ではとくに計画相談支援における相談支援専門員の役割について述べたい。
計画相談支援の大まかな流れとしては、以下のとおりである。
①利用者が市町村に行う申請相談
↓
②市町村からの特定相談支援事業者への「サービス等利用計画案」の作成依頼(利用者の同意に基づく)
↓
③特定相談支援事業者と利用者との契約
↓
④サービス等利用計画案の作成(利用者の同意に基づく)
↓
⑤市町村が利用者に行う障害福祉サービスの支給決定
↓
⑥障害者福祉サービスの支給決定(市町村→利用者)
↓
⑦市町村からの特定相談支援事業者への「サービス等利用計画」の作成依頼
↓
⑧サービス担当者会議を経てサービス等利用計画の作成
↓
⑨利用者の同意を得て、写しを市町村へ提出
↓
⑩サービス利用の開始
↓
⑪継続サービス利用支援(モニタリング)3)
(2)相談支援専門員の行うケアマネジメント
ケースマネジメント(ケアマネジメント)において、アセスメント、サービス計画作成、結びつけ、モニタリング、結果の評価という5つの機能は、ほとんどすべてのケースマネジメントの説明に見られる。そして、ケースマネジャー(ケアマネジャー)の必要不可欠な要素として、アセスメント(assessing)、結びつけ(linking)、モニタリング(monitoring)があげられている。
また、指定計画相談支援の具体的取り扱い方針 4) において、①利用者に係るアセスメントの実施、②サービス等利用計画案の作成、③サービス担当者会議の開催、④サービス等利用計画の作成、⑤サービス等利用計画の実施状況の把握などを、その一連の業務としており、責務に対する留意点が述べられている。
①アセスメントについて、利用者および家族の主体的参加、自らの課題解決に向けての意欲醸成に配慮して行われることが重要である。このため、相談支援専門員は、利用者および家族に理解できるように懇切丁寧に説明を行うことが肝要である。そして、サービスの選択については、利用者の自己決定を支援する姿勢で、利用者に接することが必要である。さらに、利用者が自立した日常生活を営むことができるように、支援する上で解決すべき課題について把握することが求められ、これらを行うためには、面接技法について、研鑽を積まなければならない。
②サービス等利用計画案であるが、その基本理念として、利用者の希望等を踏まえて作成するとともに、日常生活全般を支援する観点に立って作成されることが重要である。つまり、指定障害福祉サービス以外の地域生活支援事業や住民の自発的活動によるサービスを含むことが望まれる。
③サービス担当者会議については、サービス等利用計画案に位置づけた福祉サービス等の担当者(以下、担当者という。) からなるサービス担当者会議の開催により、その計画案の説明を行うとともに、参加者より専門的見地に立った意見を求めるものである。そして、障害福祉サービス事業者等は相談支援事業を行うものの連絡調整に協力しなければならない旨の規定を置いている。
④サービス等利用計画の作成および交付であるが、先のサービス担当者会議を踏まえたサービス等利用計画案について、利用者に同意を得た後、サービス等利用計画を作成し、利用者および担当者に交付しなければならない。なお、担当者には、この計画の趣旨および内容を説明し、共有、連携を図ったうえで、各担当者が提供するサービスに関して、サービス等利用計画の中での位置づけを理解できるような配慮が必要である。
⑤利用者、家族、サービス提供者等との連絡を継続的に行うことにより、サービス等利用計画の実施状況や、解決すべき課題の変化を把握しなければならない。そして、必要に応じて、サービス等利用計画の変更等を行っていくのである。なお、解決すべき課題の変化については、直接サービスを提供する福祉サービス事業者が把握することが多いことから、緊密な連携を図り、円滑な連絡が取れるよう、体制の整備が必要である。
3.相談支援専門員に期待される機能とホームヘルプサービス
(1)相談支援専門員の実践する結びつけ機能
本稿では、上記の相談支援専門員が行う役割の中で、とくに結びつけ機能について、考えていきたい。先の障害者自立支援法では、生活介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援、グループホームおよびホームヘルプサービス等のサービスや、さまざまな地域の資源を組み合わせて利用し、障害者が支援チームに支えられて、地域生活が可能になることを目指している。従来、入所施設や病院においては、衣・食・住すべてのサービスがその施設内で完結して提供されてしまうことから、さまざまなサービスの調整が必要ではなかった。それが、ノーマライゼーションの理念に基づく障害者自立支援法によって、「地域に散在しているこれらのサービスや資源を有機的に結びつけ、サービス提供者と調整し、関係者によるサービス等調整会議を実施しながら支援チームで障害者を支えることが必要」(相談支援専門員協会 2012:1)となったのである。
つまり、相談支援専門員は、中立な立場から、利用者および家族の意向に添って、アセスメントして明らかとなった解決すべき課題に対して、必要な福祉サービス等を利用者に情報として提供し、利用者の自己選択によりながら、福祉サービスや社会資源を組み合わせ、サービス等利用計画を作成していくのである。その後、フォローアップとして、直接サービスを実践する福祉サービス事業者が利用者の課題変化に気付きやすいという面に着目して、緊密に連携していかなければならない。
2001年の「障害者ケアマネジメントの普及に関する報告書」において、障害者ケアマネジメントについて、「様々な地域の社会資源をニーズに適切に結びつける」とあり、それによって、障害者の地域生活支援が可能になる。また、「福祉・保健・医療のほか、教育、就労などの幅広いニーズと、様々な地域の社会資源の間に立って、複数のサービスを適切に結びつけ調整を図る」(障害者ケアマネジメント体制整備検討委員会 2001:1-2.)とあり、ケアマネジャー(ケアマネジメント従事者)の結びつけ機能および調整機能に関して述べている。
(2)障害者に対するホームヘルプサービスについて
障害福祉サービスの中には、相談支援専門員が日々、連携を図っている事業として、生活介護、就労継続支援、自立訓練およびグループホーム、そして、医療保健分野として、訪問看護やデイケア等々あげられるが、今回はホームヘルプサービスに着目して、その連携について、その実態と課題について考察したい。
障害者に対するホームヘルプサービスについて、身体障害者が1967年、心身障害児が1970年にそれぞれ開始されている。しかしながら、派遣対象が重度の身体障害で家族が介護を行えないという要件に加え、低所得者ということもあったため、誰もが利用できるサービスではなかった。そののち、ホームヘルプサービスにおいて所得制限が廃止されたことを経て、1988年に重度視覚障害者および脳性まひ等全身性障害者のガイドヘルパーの派遣事業、1996年に難病者等、2002年に精神障害者に対するホームヘルプサービスが、それぞれ始まっている。
このように、それぞれ、障害者に対するホームヘルプサービスが、制度として整備された。そして、その後の支援費制度においても一定保障され、これに続く、障害者自立支援法において、定率負担や障害区分による制限を受けることになったが、ホームヘルプサービスは居宅介護事業として位置付けられることとなった。また、障害者総合支援法においても障害者自立支援法と同じく、介護給付の中にホームヘルプサービスとして居宅介護を据え、家事援助、身体介護、通院介助が実施される制度となっている。
しかしながら、障害者に対するホームヘルプサービスが、市民に対して、周知徹底が図られているとはいいがたい現実もある。筆者が、相談支援専門員として出会ってきた利用者とのかかわりを、事例から拾い、制度理解がされていない実態と、相談支援専門員とホームヘルプサービス事業所の連携によってQOLがあがった事例について明らかにしたい。
4.事例研究
*プライバシー保護のための倫理的配慮
本事例はどれも、事例の主から、本稿で発表することについて同意を得ているとともに、個人が特定されないよう、加工をしている。
(1)制度の周知について
A氏:男性
A氏は、役所の保健福祉課で、自宅の写真を窓口の係員に見せながら、この状況をどうすればよいかと相談していた。物がたくさん自宅内にあふれていて、片づけることができずに困っているということであった。保健福祉課を通じて、相談支援専門員に連絡があり、インテーク面接となって、サービス利用につながった。はじめ、A氏は、「ホームヘルパー」という言葉にたどりつくのに2年かかったと話していた。福祉サービスの誰かが、自宅内の片付けを手伝ってくれるというぼんやりとした情報はわかっていたが、それが、ホームヘルプサービスであることは、直接的に結びつかず、物のあふれた自宅内で悶々とした日々を過ごしていたということであった。
B氏:女性
B氏は、同じ障害でシングルマザーである友人からの情報で、ホームヘルプサービスを利用できることを知った。病院や役所といったいつもよく訪れる場所で、そのような周知に対しては気付かず、人づてに情報を知ったのである。B氏は、その後手帳を取得したが、その際も、分厚い冊子等を渡されたに過ぎず、今困っていることに関して、うまく伝えることができず、すぐにサービスにつながることはなかった。
(2)ホームヘルプサービスに結びつけたことからQOLがあがった事例
A氏:男性
実際、相談支援専門員との面接を終え、次回ヘルパーステーションの管理者と訪問すると約束をした翌日に、A氏から相談支援専門員に電話があり、「もう、来なくてもいい。見捨ててくれていい」という内容であった。相談支援専門員はその気持ちを受け止め、約束した日時に訪問する旨を伝えた。約束した日に、相談支援専門員とヘルパーステーションの管理者が訪問し、ともにアセスメントをしたうえで、援助の方向性を明らかにした。自宅内のすべての物について、A氏にとって意味があることを認識したうえで、一つひとつA氏に確認を取ったうえで片付けることであった。
その後、ヘルパーステーションのホームヘルパーは、A氏の要望を受け止め、A氏の自己決定によりながら、自宅を3か月でものの見事に片付けることができた。A氏は、きれいになった自宅に喜び、「ビフォーアフター」だと、片づける前の自宅と片付けた後の自宅の写真をヘルパーステーション、相談支援専門員に下さり、「宣伝に使うといい」とおっしゃった。また、部屋が片付いていないことから、エアコンが壊れていたことを大家に申告できず、不便な思いをしていたが、部屋がきれいになったことで、修理業者を自宅内に招じ入れることができ、修理も可能となったのである。
B氏:女性
B氏は、疾病から人と会うことに気後れがしたり、家の中でじっとしていたい時期であった。そこに、計画相談支援のサービス利用支援で、ホームヘルパーへとつながった。ホームヘルパーが家事援助を行うことにより、散らかっていた居室内が片付けられ、気持ちの良い空間へと変貌した。しかし、あるとき、B氏は部屋が重苦しいと感じていたが、それを口に出せないでいた。何事においても遠慮がちであるというB氏について、配慮を要すとの情報を相談支援専門員から受けていたホームヘルパーは、B氏が賛同しやすいことばかけが重要と考えていた。そこで、「冬ものを一緒に片付けましょうか」と提案し、その場に合った援助を発案したのである。利用者の思いと持てる力を引き出していく支援へと転換し、ともに家事を行うことで、B氏をエンパワメントしていったのである。
(3)考察
障害を持つ人に対して、相談支援専門員とホームヘルプサービスが連携してサービスを展開していくことについて、若干ではあるが紹介した。そのなかで、障害者がホームヘルプサービスを利用できることについて、周知が浸透していない現実と、相談支援専門員とホームヘルパーの支援の方向性を統一したことから、QOLがあがった実態が明らかとなった。
前者については、介護保険制度によって、在宅福祉サービスについて、市民の理解は大きく深まった。ある人は、介護保険で利用できるのだから、障害者も利用できるのではないかと思って、手帳更新の際に係員に聞いてみたという。その一方で、事例のようにホームヘルプサービス利用までに2年を要した人や、介護保険で母親がホームヘルプサービスを利用していたが、母親の死亡により、家事ができないことから、母親の介護支援専門員の勧めで、やっと利用につながった人などもいる。このような実情を鑑み、これら、周知に関しては、手法等検討が必要である。
後者であるが、相談支援専門員とホームヘルパーが、援助目標を合わせ、配慮すべき点に注意することによって、利用者の生活が目標に近づくということである。ホームヘルパーは、利用者の一番近くにいて、日々の変化、心の機微を一番感じやすいサービス提供者の一人である。先日、サービス担当者会議において、ホームヘルプサービスの管理者より、家事援助である掃除について、ゆくゆくはともに行う掃除に変えていってはどうかとの提案があった。このような発案は、一番近くにいて援助を展開するホームヘルパーであればこそできることであり、利用者の持ちうる力を理解したうえでのことである。したがって、相談支援専門員とホームヘルパーとが、協働して援助を展開していくことは意味が深く、障害者が地域で暮らすことを指向して、結びつけからフォローアップ、評価を協働して実践することが重要である。
5.相談支援を行う上での課題
相談支援に関する課題として、①制度周知、②相談支援専門員の質について述べたい。
まず、①制度の周知に関しては、ホームヘルプサービス等障害福祉サービスだけではなく、計画相談支援についても周知されているとはいい難い。これは、地域間格差が大きいと考えられるが、筆者の活動する地域では、計画相談事業所の一覧が、始めから利用者に送付される仕組みではない。ある利用者は、2年前の地域の広報誌に掲載された福祉資源マップを大事にとっていて、それをたよりに計画相談支援事業所を探していたという。このような現状を鑑み、地域間で格差のない、制度の周知徹底について考えていかなければならない。
次に、②相談支援専門員の質であるが、前述したとおり、ケアマネジメント遂行過程においても、面接技術の研鑽が必要であり、利用者の自己決定・意思決定を尊重するための配慮も心掛けなければならない。
相談支援専門員の質の確保について、5年ごとの研修受講を課しているが、根本的な問題が2点ある。一つ目が、高齢者施設等、障害をもつ人との接点のない人でも、就労経験として換算され、相談支援専門員の初任者研修を受講することができる5)ことである。二つ目が、国家試験等の資格試験がないことである。前者については、介護支援専門員に関しても同じことがいえるが、障害者にしても、高齢者にしても、その対象となる人の特性に関して、知識および経験のない人が、支援を実践できるかどうかは疑問視される。また、後者についてであるが、社会的承認を得るための資格試験について検討されるべきである。ソーシャルワークの専門職業を構成する属性として、試験による合格によってその資質を証明することも求められる。試験に関して、介護支援専門員は、国家資格ではないが、介護支援専門員実務研修受講試験が実施されており、今後は、そのような視点も必要であろう。
今後、多くの障害者に対して、地域で安心して暮らすことを目的として、相談支援が増加することが予想される。そのような視点から、相談支援専門員の質の確保は急務であり、障害福祉制度およびソーシャルワークに関する知識、確かな面接技法の取得等、研鑽が必要である。
6.おわりに
本稿では、相談支援専門員の実践における計画相談支援について、ホームヘルプサービスとの連携に着目して、その実践を少しの事例を紹介することから、考察を進めていった。相談支援専門員が連携する障害福祉サービスは、ホームヘルプサービスだけではなく、生活介護、短期入所、自立訓練、就労継続支援、就労移行支援、グループホーム等多くの障害福祉サービスとの連携が必要である。また、医療系のサービスとして、訪問看護、デイケア等との連携も日々実践している。そして、その他の社会資源として、教育機関やハローワークも重要であり、今後は、それらとの連携に関する研究も自身の課題である。さらに、最後に述べた相談支援の課題に関しても、日々の実践を通しての思いという面も否めず、全体を把握しての課題とはいえない。そこで、先行研究の精読から、もっと本質的な研究すべき課題についても学習を続けたい。そのような学習とともに、これからは、実践を継続することによって、得られた成果を事例研究という形で、発表できるよう研鑽を重ねていきたい。
注
1)相談支援専門員協会 2012:1「 サービス等利用計画作成サポートブック」https://www.city.otaru.lg.jp/jigyo/fukusi_kaigo/soudan_sien/index.data/sapoto-book.pdf2016年8月30日
2) 障害福祉サービスでは居宅介護という文言が使用されている。介護保険では訪問介護であるが、本稿では混乱を避ける意味から、本来のホームヘルプサービスと記す。
3) 大阪市障がい者機関相談支援センターセミナー 指定特定相談支援事業所フォローアップ基礎研修2016資料を参考に作成
4)「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定計画相談支援の事業の人員及び運営に関する基準について」2012年3月30日 障発0330第22号
5)「指定計画相談支援の提供に当たる者として厚生労働大臣が定めるもの」2012年3月30日 厚生労働省告示第227号
文献
伊藤幸子(1999)「ホームヘルプサービスの変遷」浜田和則・秦康宏著『ヘルパーステーションの運営管理』中央法規出版、13-48.
伊藤幸子(2002)「ホームヘルプサービスの実際からみた自立を指向した援助の意義」『社会福祉士第9号』106-112.
木下康仁 1997:64「質的研究法による高齢者のケアサービスの研究」『季刊・社会保障研究』Vol.33、No.1、64.
北野誠一(2013)「本人中心相談と支援計画の理念と展開」朝比奈ミカ・北野誠一・玉木幸則編著『障害者本人中心の相談支援とサービス等利用計画ハンドブック』ミネルヴァ書房.
奥田いさよ『社会福祉専門職制の研究』1992年、川島書店.
ステファン・M.ローズ編、白澤政和・渡辺律子・岡田進一監訳(1997)『ケースマネジメントと社会福祉』ミネルヴァ書房.
障害者ケアマネジメント体制整備検討委員会(2001) 「障害者ケアマネジメントの普及に関する報告書」:1-2. syougai_keamanehoukoku_20010331.pdf2016年8月30日
山内健生・望月隆之(2015)「障害のある人の相談支援の歴史的変遷とその目指すべきもの」『福祉開発社会研究』57-68. www.toyo.ac.jp/uploaded/attachment/15347.pdf2016年8月31日